障害者雇用は「雇えば成功」なのか――雇用率2.7%時代、日本企業に問われるキャリア・評価・給与の構造

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障害者雇用で本当に怖いのは、採用されないことだけではありません。

採用されたあと、

仕事を覚え、

経験を積み、

難しい仕事を任され、

責任が増え、

周囲から頼られるようになっても――

評価と給与だけが「障害者雇用で入社したとき」のまま残り続けること。

私は、こちらの方が深刻な問題ではないかと考えています。

例えば、部署をまたぐ業務改善をする。

プロジェクトを管理する。

急なトラブルに対応する。

複数の関係者を調整する。

現場の判断を任される。

それだけの仕事をしているにもかかわらず、

「障害者雇用だから」

という見えない枠によって、補助的・定型的な仕事を前提とした評価や処遇から抜け出せない。

もし日本企業の中でこのようなことが起きているのであれば、問題は本人の障害ではありません。

人の能力が変化しているのに、人事制度が変化できていないこと。

ここに、障害者雇用の次の大きな課題があります。

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障害者雇用は「採用」の時代から「キャリア」の時代へ

2026年7月1日から、民間企業の障害者法定雇用率は2.5%から**2.7%**へ引き上げられました。一定の重度身体障害者・重度知的障害者については、雇用率算定上1人を2人として扱う仕組みもあります。

これは障害者の雇用機会を増やすための重要な制度です。

しかし、ここで終わってはいけません。

企業が見る数字が、

「何人採用したか」
「法定雇用率を達成したか」

だけになってしまえば、その先のキャリアが見えなくなるからです。

これから問うべきなのは、

その人が入社後に何をできるようになったのか。

です。

仕事の幅は広がったのか。

専門性は高まったのか。

責任は増えたのか。

成果は評価されたのか。

昇格できるのか。

そして、

仕事の価値と給与は連動しているのか。

障害者雇用の成熟度は、採用人数だけでは測れません。

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「障害者雇用=簡単な仕事」という前提そのものを疑う

障害者雇用という言葉から、

データ入力。

書類整理。

庶務。

定型業務。

補助業務。

を思い浮かべる人は、まだ少なくないでしょう。

もちろん、こうした仕事も重要です。

問題は、

「障害者だから、この程度の仕事だろう」と能力まで先回りして決めてしまうことです。

障害のある人の中にも、

20年以上の実務経験を持つ人がいます。

プロジェクトマネジメントができる人もいます。

AIやITに詳しい人もいます。

BPRや業務改善ができる人もいます。

デザイン、企画、文章、カウンセリング、営業、マネジメントに強い人もいます。

障害があることは、

身体機能や認知、コミュニケーションなどに一定の制約があるということであって、

職業能力そのものが低いという意味ではありません。

それでも、

「障害者雇用で採用した人」

という最初のラベルが、その後のキャリアまで決め続けてしまう。

もしそうなら、それは本人の問題ではなく、

企業側の人材評価システムの問題です。

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仕事だけ高度化し、処遇だけが入口に残る「構造的な乖離」

企業では、仕事のできる人に仕事が集まります。

障害者雇用でも同じです。

最初は定型業務だった人でも、

仕事の正確性が高い。

判断が速い。

調整能力がある。

周囲から信頼される。

問題解決ができる。

と分かれば、徐々に難しい仕事を任されるようになります。

これは本来、良いことです。

ところが問題は、

「仕事の高度化」と「評価の高度化」が同時に起きるとは限らない

ことです。

担当業務は高度になる。

責任は重くなる。

調整する人数も増える。

判断を求められる。

しかし、

等級。

評価。

昇格。

給与。

だけが変わらない。

この状態が長期間続けば、

企業は高度な能力を利用できる一方で、本人はその価値に対応したキャリア上の果実を得にくくなります。

意図的な「買い叩き」と断定できるとは限りません。

しかし結果として、

高度な仕事と低い処遇が固定化される構造

が生まれる可能性はあります。

ここを日本企業は直視する必要があります。

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本当に評価すべきなのは「属性」ではなく、何を解決したか

例えば重要な会議や説明会の直前に、管理職の予定が突然変わったとします。

その瞬間に、

参加者を組み替える。

時間配分を変える。

説明の順番を変更する。

関係部署へ連絡する。

現場業務への影響を最小化する。

そして、当初の目的を達成する。

こうした仕事に必要なのは、単純な事務処理能力ではありません。

状況判断。
優先順位付け。
リスク管理。
利害調整。
コミュニケーション。
プロジェクトマネジメント。
現場統率力。

同じ成果を障害のない社員が出せば「調整力が高い」「管理能力がある」と評価する。

それなのに障害者雇用の社員が同じことをしても、

「障害者枠の事務職」

というラベルの中だけで評価する。

それでは企業自身が、

人材の価値を正確に測れていません。

これは福祉の問題ではありません。

人的資本経営の問題です。

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「雇用率2.7%」はゴールではなく入口である

法定雇用率は必要です。

私はその存在を否定しているわけではありません。

むしろ、雇用機会そのものを社会に生み出すために重要な仕組みです。

ただ、

2.7%を達成した会社=障害者雇用に優れた会社

とは限りません。

本当に見るべきなのは、その先です。

採用できる

↓

定着できる

↓

能力を伸ばせる

↓

高度な仕事を任せられる

↓

成果を正当に評価できる

↓

昇格・報酬へ反映できる

ここまでつながって初めて、

障害者雇用は単なる「雇用率対策」から、

本当の人材戦略

へ変わります。

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多様性とは「違う人を雇うこと」だけではない

私は以前から、多様性についてこう考えています。

多様性とは、

男女比を整えることだけでも、

障害者を一定人数採用することだけでもありません。

違う人が入ってきたとき、その人の能力を活かすために組織自身も変われること。

これこそ重要ではないでしょうか。

人を既存の仕組みに押し込む。

合わなければ「本人の問題」にする。

ではなく、

「この人の力を活かすには、仕事や評価の仕組みをどう変えればいいだろう」

と考える。

そこまで進んで初めて、インクルージョンになります。

▶ 次に考えてほしい記事
「多様性を壊すのは『違い』ではない――“普通の人”を前提にした組織設計を問い直す」

この記事と合わせて読むと、「採用した後になぜ能力を活かせないのか」という構造がさらに見えてきます。

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障害者にも「キャリアアップしたい人」がいる

障害者雇用では、「安定して働き続けること」が重視されます。

もちろん、それを望む人もいます。

それでいいと思います。

しかし、全員が同じではありません。

専門性を高めたい。

給与を上げたい。

マネジメントをしたい。

難しい仕事へ挑戦したい。

管理職になりたい。

転職したい。

副業したい。

独立したい。

そんな人もいます。

障害者にもキャリア志向の違いがある。

当たり前の話です。

それなのに、

「障害者だから安定して働ければ十分」

と会社側が勝手に決めてしまえば、

本人の可能性を会社が先に閉じることになります。

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当事者も、会社の評価を「自分の価値」にしない

そして、この問題は企業だけに投げかけたいわけではありません。

障害のある当事者にも伝えたいことがあります。

会社から低い評価を受けているからといって、

あなた自身の市場価値まで低いとは限りません。

評価制度は、その会社の中の物差しです。

だからこそ、自分自身でも成果を記録する。

何を改善したか。

どんな問題を解決したか。

どんなプロジェクトを動かしたか。

どんな専門性を身につけたか。

何人、何部署を調整したか。

どれだけ時間やコストを削減したか。

「頑張った」ではなく、

自分が生み出した価値を言葉にできる状態にする。

これは非常に重要です。

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一つの会社だけに、自分の人生を評価させない

さらに必要なのは、

一つの会社だけに自分の人生を預けないことです。

本業を続けながら、

資格を取る。

学ぶ。

発信する。

副業する。

人脈をつくる。

別の専門性を育てる。

転職できる状態をつくる。

個人として仕事を受けられる力を育てる。

複数の選択肢を持つ。

それは会社への裏切りではありません。

自分の人生を守るためのキャリア設計です。

▶ 関連記事
「一つに依存しない――障害があっても生き抜くための『複線型人生』という設計」

一つの会社の評価が低くても、人生全体まで低く評価されたわけではありません。

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障害者を「雇っている会社」から「活かしている会社」へ

日本の障害者雇用は、大きな転換点に来ています。

これまで重要だったのは、

「雇うこと」

でした。

これから重要になるのは、

「活かすこと」

です。

採用する。

定着する。

それだけでは終わらない。

育てる。

任せる。

評価する。

昇格させる。

報酬へ反映する。

そして本人が、

自分のキャリアを選べる。

そこまでできて初めて、

「障害者を雇用している会社」から、

「多様な人材を活かせる会社」

へ変わるのではないでしょうか。

障害者雇用は、福祉だけの問題ではありません。

人事の問題です。

経営の問題です。

そして、

日本企業が人の能力をどこまで正確に見られるのかという問題です。

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あなたの会社は「何人雇ったか」の先を見ていますか?

もし、あなたが経営者、人事担当者、管理職なら、

一度、自社の障害者雇用を「人数」ではなく「キャリア」から見てみてください。

障害のある社員は、入社したときより難しい仕事をしていますか?

その責任は評価へ反映されていますか?

昇格の道はありますか?

給与は仕事内容と釣り合っていますか?

本人が「もっと挑戦したい」と言ったとき、その道は用意されていますか?

もし一つでも答えに迷うなら、

そこに次の組織改革のヒントがあります。

そして、障害者雇用で働いている当事者へ。

もし仕事と評価の間に違和感があるなら、

すぐに「自分の能力が足りない」と結論づけないでください。

仕事は高度化しているのに、人事制度だけがあなたの成長についてきていない可能性があります。

自分の成果を記録してください。

自分の専門性を育ててください。

会社の外にもつながりを持ってください。

そして、

自分の価値を、一つの会社の等級や給与だけで決めないでください。

New Lifestyle DLMでは、障害者雇用、人生再設計、多様性、働き方、そして「自分を大切にする生き方」を通して、

人を既存の枠に合わせる社会から、人の違いに合わせて仕組みも変われる社会へ

という問いを発信しています。

▶ あわせて考えてほしい記事
「障害者雇用は福祉ではない――必要なのは『働ける人に合わせる』のではなく、互いを理解できる組織」

▶ 人生側から考えるなら
「『自立しろ』が人を孤立させる――本当の自立とは何か」

この記事を読んで、

「これは自分の会社にもある」

「人事担当者に考えてほしい」

「同じことで悩んでいる人へ届けたい」

と感じたら、ぜひこの記事を共有してください。

一人の違和感が言葉になることで、

一つの会社の評価制度が変わるかもしれない。

一社の変化が、

日本の障害者雇用の「当たり前」を変えるかもしれない。

そして、これからもこの問題を一緒に考えたいと思っていただけたら、New Lifestyle DLMをフォローしていただければうれしいです。

最後に、企業へ一つだけ問いかけたい。

あなたの会社は、障害者を「何人雇ったか」を見ていますか。

それとも、

「その人が、どこまで成長し、どれだけ価値を生み出しているか」まで見ていますか。

障害者雇用の次の10年を決めるのは、

この違いだと思います。

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