2027年度の障害者雇用戦略|法定雇用率2.7%時代、経営者が見直すべき組織設計と90日改革

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――「善意に頼る会社」から「人が活きる仕組みを持つ会社」へ。

「障害者雇用は、今のところうまくいっています」

そう話す経営者や管理職に、私は一つ質問したいと思います。

その上司が、明日いなくなっても続くでしょうか。

本人の特性を理解している上司。

仕事量を調整してくれる管理職。

困ったときに相談できる人事担当者。

そして、周囲を支えている同僚たち。

こうした人々の存在は、障害者雇用にとって大切です。

しかし、その人たちが異動した瞬間に、仕事の品質や配慮の仕組みが崩れてしまうとしたら。

それは、組織として安定していると言えるのでしょうか。

私は、かつて管理職として人に仕事を任せ、成果を求め、評価する側にいました。

その後、脳出血によって中途重度障害者となり、今度は合理的配慮を受けながら働く側になりました。

両方の立場を経験したことで、以前とは違う問いを持つようになりました。

「社員が仕事をできない」のか。

「社員が仕事をできる条件を、会社が設計していない」のか。

この二つは、まったく同じ問題ではありません。

2027年度。

私は、障害者雇用を考えるうえで、この違いをより多くの経営者や管理職と共有していきたいと考えています。

この記事では、法定雇用率2.7%時代の企業が直面する課題と、組織を変えるための具体的な90日間の取り組みを整理します。

そして最後に、オウンドメディア『不自由な自由』が2027年度の本格始動に向けて、何を目指すのかをお伝えします。

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1.2027年度、障害者雇用は何が変わるのか

まず、制度と現状を正確に確認しておきます。

民間企業の法定雇用率は、2026年7月1日に2.5%から2.7%へ引き上げられました。

雇用義務の対象となる事業主の範囲も、常用雇用労働者数37.5人以上へと拡大されています。

つまり、2027年度は、2026年7月に引き上げられた2.7%の法定雇用率のもとで、企業が雇用と組織運営に取り組む年度になります。

この制度変更には、数字の面でも対応が必要です。

一方、厚生労働省が公表した2025年の障害者雇用状況では、民間企業の雇用障害者数は70万4,610.0人、実雇用率は2.41%でした。

雇用障害者数は過去最高を更新しましたが、法定雇用率を達成した企業の割合は46.0%にとどまっています。

※2025年の統計は、当時の法定雇用率2.5%のもとで集計されたものです。

障害者雇用は着実に広がっています。

しかし、私はここで、数字とは別の問いを置きたいと思います。

雇用する人数が増えることと、人を活かす組織能力が高まることは、同じなのでしょうか。

採用人数を増やす。

法定雇用率を達成する。

定着率を改善する。

これらは、企業にとって重要な目標です。

しかし、採用された人が能力を発揮できない。

仕事の内容が曖昧なまま。

配慮と成果の関係が整理されていない。

成長やキャリアを描けない。

こうした状態が残るなら、数字の達成だけでは解決しない課題があると考えます。

2027年度に向けて、私が重要だと考えるのは、障害者雇用を「人数を満たす取り組み」だけで終わらせず、人の能力を組織の成果へ結びつける仕組みとして設計することです。

2.障害者雇用が教えてくれた、組織の見えない弱点

私は、管理職だった頃、問題が起これば解決策を考えようとしていました。

社員が仕事を理解していない。

業務が遅れている。

判断ができない。

周囲と調整できない。

こうした状況に対して、本人に何を改善してもらうべきかを考えることがありました。

もちろん、それ自体が間違いだったとは思いません。

企業には、品質や納期を守る責任があります。

働く側にも、役割を果たす責任があります。

しかし、障害を負った後、私の見方は変わりました。

それまで当然だった働き方が、ある日、当然ではなくなったからです。

以前と同じ方法では、できない仕事があります。

けれど、その経験から一つのことに気づきました。

仕事の方法が変わることと、人が持つ知識や経験の価値がなくなることは、必ずしも同じではない。

例えば、ある社員が会議中に発言しにくいとします。

その原因は、本当に主体性の不足だけでしょうか。

発言する前に資料を確認できる環境があれば、どうでしょう。

事前に意見を提出できる方法があれば。

会議で求められている判断内容が明確になっていれば。

その社員が持つ知識を、別の方法で活かせるかもしれません。

もちろん、仕事の内容によって必要な条件は異なります。

すべての業務を自由に変更できるわけではありません。

だからこそ重要なのは、何が業務上不可欠で、何が単なる慣習なのかを切り分けることです。

私は、ここにBPRの可能性があると考えています。

3.企業が見落としやすい「6つの組織コスト」

障害者雇用を考える際、人件費や採用費用には目が向きます。

しかし、経営者や管理職が見落としやすい負担もあります。

私は、組織設計を考えるうえで、次の6つを確認すべきだと考えています。

① 判断待ちのコスト

担当者は仕事を終えているのに、承認や確認がなければ次の工程へ進めない。

仕事そのものではなく、意思決定の構造が業務を止めている可能性があります。

② 説明のやり直しによるコスト

業務の目的や完成基準が曖昧なため、何度も説明や修正が必要になる。

その時間は、担当者だけでなく管理職の負担にもなります。

③ 属人化によるコスト

特定の管理職だけが仕事の進め方や配慮の経緯を知っている。

その人が異動・退職すると、組織は同じ問題を一から解き直すことになります。

④ 業務負担の偏りによるコスト

仕事の量や難易度が可視化されず、一部の社員だけに負担が集中する。

表面的には仕事が回っていても、持続可能とは限りません。

⑤ 成長機会の喪失

仕事に慣れ、成果を出せるようになっても、次の仕事や評価基準が用意されていない。

定着していることと、成長できていることは違います。

⑥ 能力を活かせないことによる機会損失

仕事の方法や条件が固定されているために、本来活かせる知識や経験が十分に使われていない。

これは、障害者雇用に限った問題ではありません。

育児や介護と仕事を両立する人、病気から復職する人、新しい業務に挑戦する社員にも関係します。

こうした負担は、すべてが財務諸表に独立した項目として表れるわけではありません。

また、具体的な金額を把握するには、業務時間や手戻り、機会損失を個別に確認する必要があります。

しかし、見えにくいからこそ、経営として確認する価値があるのではないでしょうか。

人件費を削る前に、人が能力を発揮できずに失われている時間と機会を確認する。

これも、人的資本経営の重要な視点だと考えています。

4.2027年度に向けて必要な「Work Architecture」という考え方

私は、組織の仕事を一つの仕組みとして捉える考え方を、Work Architectureと呼んでいます。

それは、障害者を特別扱いする制度を増やすことではありません。

一人ひとりの異なる条件を踏まえながら、仕事が成果につながる仕組みを整えることです。

具体的には、六つの領域を重視しています。

業務設計

何を成果とする仕事なのか。どの工程に時間や判断が必要なのか。

配慮と成果の設計

どのような障壁を取り除き、どのような成果を期待するのか。

管理職支援

管理職が判断できることと、人事・専門部署に相談すべきことは何か。

ナレッジ継承

成功した工夫や判断基準が、特定の人の頭の中だけに残っていないか。

成長と評価

本人が何を達成し、次にどの仕事へ進めるのか。

組織ガバナンス

誰が運用に責任を持ち、制度の実効性をどう確認するのか。

重要なのは、これらを別々に改善しないことです。

仕事を分解しても、評価基準がなければ成果を説明できません。

合理的配慮を整えても、管理職に相談体制がなければ運用が属人化します。

マニュアルを整備しても、現場で使われなければ意味がありません。

だからこそ、業務・配慮・評価・管理・改善を、一つにつながった仕組みとして捉える必要があります。

私は、これを単なる障害者雇用対策ではなく、企業が人を活かすための経営インフラとして考えています。

5.経営者・管理職のための90日間の組織改革

では、実際に何をすればよいのでしょうか。

私は、最初から大規模な改革を始める必要はないと考えています。

まず、一つの仕事を選んでください。

その仕事を題材に、90日間で業務設計を見直す方法を紹介します。

以下は、私が提案する実践モデルです。90日間で必ず成果が出ることを保証するものではありません。

【1〜30日目】仕事の構造を可視化する

最初の30日間で確認するのは、社員の能力ではなく仕事の構造です。

対象業務を一つ選び、次の項目を整理します。

– 業務の目的と期待する成果
– 主な作業工程と担当者
– 必要な情報と道具
– 判断が必要な場面
– 承認や相談が必要な条件
– 現在の業務時間、待ち時間、手戻り

ここで大切なのは、「誰の仕事が遅いか」を探すことではありません。

仕事が、どこで、なぜ滞っているのかを理解することです。

例えば、書類作成に時間がかかっているように見えても、実際には必要な情報を集める時間や、承認を待つ時間が大きいかもしれません。

その場合、担当者へ処理速度の向上だけを求めても、十分な改善にはつながりません。

【31〜60日目】成果を守りながら、仕事を再設計する

次の30日間で、確認した課題の中から改善対象を選びます。

例えば、

– 指示内容と完成基準を明文化する
– 不要な確認工程を見直す
– 判断権限と相談条件を整理する
– 情報を探す時間を減らす
– 業務量の偏りを把握する
– 必要な支援技術や作業方法を検討する

といった取り組みです。

ここで、誤解してほしくないことがあります。

BPRとは、必要な確認や管理を無理に削ることではありません。

安全性、品質、法令遵守、情報管理などのために必要な工程は残すべきです。

また、合理的配慮は本人の状況や職務の内容を踏まえて検討するものであり、すべての人に同じ方法を当てはめるものではありません。

標準化するべきなのは、判断の原則や必要な確認項目です。

個別に調整すべき部分には、柔軟性を残します。

人の個性を標準化するのではなく、人が働くための条件を整える。

この違いを大切にしたいと思います。

【61〜90日目】改善の成果を検証し、組織に残す

最後の30日間では、改善した業務が本当に機能しているかを確認します。

見るべきなのは、処理時間だけではありません。

例えば、

– 処理時間は短縮されたか
– 手戻りやミスは減ったか
– 管理職の追加対応時間は変化したか
– 業務負担の偏りは改善したか
– 本人が役割と期待成果を理解できているか
– 担当者が変わっても業務を引き継げるか

といった項目です。

仮に処理時間が短くなっても、別の社員に負担を移しただけなら、組織全体の改善とは言えません。

また、短期間の変化だけで成果を断定せず、一定期間継続して確認することも必要です。

良い改善が見つかったら、手順、判断基準、相談経路を整理し、組織の知識として残します。

重要なのは、特定の管理職が頑張り続けなくても、改善した仕組みが運用される状態をつくることです。

90日間の取り組みを一枚で整理する

期間| 取り組み| 残す成果物
1〜30日| 業務の可視化| 業務工程・負担・判断箇所の一覧
31〜60日| 業務の再設計| 改善した手順・権限・相談基準
61〜90日| 成果検証と定着| KPI確認表・引き継ぎ手順

一つの仕事で改善できたことが、別の仕事でも有効とは限りません。

しかし、改善するための考え方と検証方法を組織に残すことはできます。

その積み重ねが、担当者個人への依存を減らすことにつながると考えています。

6.2027年度の経営者に問いたいこと

ここまで、具体的な組織設計について説明してきました。

しかし、私は、方法論だけでは組織は変わらないとも考えています。

なぜなら、仕事の仕組みを変えるということは、これまで当然だと思っていた判断基準を問い直すことでもあるからです。

例えば、経営者が「主体性のある社員を増やしたい」と考えているとします。

しかし、現場では、

自分で判断すると叱られる。

改善を提案すると、仕事だけが増える。

失敗すると評価が下がる。

何もしなければ大きな問題にならない。

こうした状況が存在しているとしたら、どうでしょうか。

そこで主体性を発揮しない人がいることを、本人の意識だけで説明できるでしょうか。

もちろん、本人の姿勢や能力も確認すべきです。

しかし、組織の仕組みが望ましい行動を妨げていないかも、同時に確認する必要があります。

私は、優れた組織とは、優秀な人だけを集めた組織ではないと思っています。

人が自分の能力を発揮し、責任を持って成果を生み出せる条件が整った組織。

そこにこそ、持続的な強さがあるのではないでしょうか。

7.2027年度、『不自由な自由』が本格始動する理由

ここからは、このメディアについてお伝えします。

『不自由な自由』は、私自身の人生経験から生まれたオウンドメディアです。

脳出血によって中途重度障害者となった私は、それまで当然だった生活や働き方を見直さざるを得なくなりました。

できなくなったことがあります。

諦めなければならなかったこともあります。

しかし、私は、その経験を通じて一つの考えにたどり着きました。

自由とは、制約がまったくない状態だけを意味するのではない。

自分にある条件を理解し、その中で生き方や働き方を設計することにも、自由は存在するのではないか。

私は、そう考えています。

そして、この考え方は、企業経営にも通じると感じています。

人員には限りがあります。

予算にも限りがあります。

時間にも限りがあります。

人の能力や働ける条件も、一人ひとり異なります。

企業経営もまた、さまざまな制約の中で成果を生み出す活動です。

だからこそ、制約を理由に可能性を諦めるのではなく、制約を理解したうえで仕組みを設計する。

その思想を、人生と組織の両方へ広げていきたいのです。

2027年度に向けた三つの約束

私は、2027年度を『不自由な自由』が、より体系的に専門性と実践知を発信していく本格始動の年と位置づけています。

そのために、三つの方針を大切にします。

第一に、経験を単なる体験談で終わらせない。

中途重度障害者としての経験。

管理職としての経験。

障害者雇用の当事者としての経験。

そこから得た気づきを、組織や社会の課題を考えるための視点へ変えていきます。

第二に、問題提起だけで終わらせない。

「会社の仕組みが悪い」と批判するだけでは、現場は変わりません。

仕事をどう分解するのか。

何を評価するのか。

誰が判断するのか。

管理職をどう支えるのか。

そうした実務へつながる考え方を、できる限り具体的に整理します。

第三に、善意だけに頼らない組織の仕組みを考える。

優しい人がいることは、大切です。

理解のある管理職がいることも、大切です。

しかし、その人がいなくなった瞬間に、働く環境まで失われてしまうとしたら。

私は、そこに改善の余地があると考えています。

善意を否定するのではなく、善意がなくなっても困らない仕組みではなく、善意だけに頼らず成果と尊厳を守れる仕組みをつくる。

その考え方を、Work Architectureという組織設計の視点から発信していきます。

8.このメディアを、誰に読んでほしいのか

私は、このメディアを障害者雇用の当事者だけに届けたいわけではありません。

人材をどう活かすべきか悩む経営者。

部下の育成と成果の間で葛藤する管理職。

制度と現場の間で調整を続ける人事担当者。

組織改革に取り組むBPR担当者やコンサルタント。

そして、これまでの働き方や生き方に疑問を抱いている方々。

それぞれの立場から読んでいただきたいと思っています。

なぜなら、私は「人を活かす」という問題を、特定の人だけの問題だとは考えていないからです。

障害者雇用で見えてきた課題が、新入社員の育成にも関係することがあります。

育児や介護との両立にも関係します。

病気からの復職にも関係します。

そして、管理職自身の働き方にも関係します。

障害者雇用は、企業が持つ「人を活かす能力」を問い直す入口になり得る。

私は、その可能性を追究していきたいと考えています。

9.最初の一歩は、会社の「現在地」を知ること

ここまで読んでくださった経営者や管理職の方へ。

もし、御社の障害者雇用について、

「現在はうまくいっている」

と感じているなら、ぜひ一つだけ確認してみてください。

その成功は、仕組みによって生まれていますか。それとも、理解ある誰かによって支えられていますか。

私は、この問いを整理するために、無料の「障害者雇用・善意依存度診断」を公開しています。

無料|障害者雇用・善意依存度診断

この診断は、障害のある社員の能力を評価するものではありません。

管理職個人の優しさを評価するものでもありません。

確認するのは、会社側の仕組みです。

全12問を通じて、業務設計、配慮と成果、管理職支援、ナレッジ継承、成長と評価、組織ガバナンスという六つの領域を振り返ります。

専門的な監査や法令適合性の判定に代わるものではありませんが、自社の課題を整理するための最初の手がかりとして活用できます。

▶ “無料で障害者雇用・善意依存度診断を受ける” (https://newlifestylesdlm.jp/disability-employment-goodwill-dependency-check/)

まず、自社の現在地を知る。

そして、何を変えるべきかを考える。

その小さな一歩から、組織改革を始めてみてはいかがでしょうか。

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10.最後に――人を責める前に、構造を疑う

2027年度に向けて、私が最も伝えたいことは、とてもシンプルです。

人を責める前に、構造を疑う。

仕事が遅い人がいる。

指示を待つ人がいる。

成果を出せない人がいる。

能力を活かせていない人がいる。

そのとき、本人の問題だけで結論を出さない。

仕事の目的は明確か。

必要な情報は届いているか。

判断権限は整理されているか。

業務負担は適切か。

配慮と成果の基準は共有されているか。

成長できる機会はあるか。

組織が変えられる条件はないか。

一度、考えてみる。

もちろん、その結果として、本人に改善を求める必要がある場合もあるでしょう。

しかし、組織の仕組みを確認する前から、本人の可能性を決めつけたくはありません。

私は、元管理職であり、中途重度障害者でもあります。

管理する側と配慮を受ける側。

その両方の経験を持つ者として、これからも問い続けたいと思います。

企業にとって本当に重要なのは、今いる人を、今の仕組みへ無理に合わせることなのでしょうか。

それとも、必要な品質と成果を守りながら、人が能力を発揮できる仕組みをつくることなのでしょうか。

人を標準化するのではない。

人が成果を生み出せる条件を設計する。

2027年度。

『不自由な自由』は、この思想を、経営と人生の両方へ届けていきたいと考えています。

制約があるからこそ、見えてくるものがある。

当たり前が壊れたからこそ、問い直せるものがある。

そして、問い直すことで初めて生まれる、新しい自由がある。

不自由な自由。

――制約から、人生と組織を再設計する。

読者の皆さんへ、最後の問い

あなたの組織が「人の能力の問題」だと考えていることの中に、実は「仕事の設計」で変えられるものはありませんか。

その答えを探すところから、次の改革は始まるのかもしれません。

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