――揚水発電の「本当の立ち位置」と、次世代地熱・再生可能エネルギーが主役になる未来
—
リード|「原発銀座」と山奥の巨大バッテリー、その先に見えるもの
関西に住んでいると、エネルギーの風景はとても極端です。
日本海側の静かな漁村と田んぼ。その少し向こうには、高浜原子力発電所や美浜原子力発電所といった「原発銀座」がある。
さらに内陸に入ると、兵庫県朝来市の山奥に、奥多々良木発電所という日本最大級の揚水発電所が口を開けている。
同じ関西電力グループの電源として、北アルプスの黒部ダムの水を使う黒部川第四発電所(黒四)も有名です。
> 「原子炉で静かに熱をつくる装置」と
「山をえぐって水を落とす巨大な水のバッテリー」
この両方が、同じ「関西の電気」を支えている――。
中途で重い障害を負い、「自分の体力配分」ですら毎日調整しながら生きている私は、
このエネルギーの構図を眺めるたびに、どうしても考えずにはいられません。
高浜や美浜は、どれくらいの電気を生み出しているのか
奥多々良木や大河内、黒四は、それと比べてどんな役割を担っているのか
そして、これからの主役は原子力なのか、それとも次世代地熱+再生可能エネルギーなのか
この記事では、高浜原発・美浜原発・奥多々良木発電所・大河内発電所・黒四を発電量と発電効率の観点から比較しながら、
揚水発電の「本当の立ち位置」をわかりやすく整理し
次世代型地熱発電と再生可能エネルギーが主力を担う未来の姿
を、専門知識と生活者の実感の両方から、じっくり掘り下げていきます。
—
この記事でわかること(要約)
先に結論をまとめておきます。
高浜原発・美浜原発は、**「大量の電気を長時間つくり続けるベースロード電源」**としての役割が大きい
奥多々良木・大河内は、**「余った電気を水として貯め、必要なときに一気に取り出す巨大バッテリー」**である
黒四は、単体としては原発より小さいが、水力発電と流域全体を束ねるハブとして重要
揚水発電は、原発の余剰電力を吸収するだけの存在ではなく、
今後は太陽光・風力・次世代地熱など再エネ全体を支える系統インフラになる
日本は地熱資源で世界トップクラスなのに、まだごく一部しか使えていない
次世代型地熱(EGS・クローズドループ・超臨界地熱など)が実用化すれば、
**「地熱+水力+揚水」×「太陽光+風力+蓄電池」**という多層的な電源構成が現実的になる
そのとき、揚水発電は「脇役の水力発電」ではなく、再エネ時代の心臓部として存在感を増していく
この構図を頭に入れたうえで、順番に深掘りしていきましょう。
—
目次
1. 原子力発電と水力発電・揚水発電の基礎知識
2. 高浜原発・美浜原発の発電規模と役割
3. 奥多々良木・大河内・黒四の発電規模と特徴
4. 発電効率から見る「役割分担」―原発vs水力vs揚水
5. 「原発+揚水」から「再エネ+揚水」へのシフト
6. 日本の電源構成の変化とエネルギー政策の方向性
7. 次世代型地熱発電とは何か?──EGS・クローズドループ・超臨界地熱
8. 「揚水+次世代地熱+再エネ」が主力になる未来図
9. 但馬・北近畿から考える地方の役割と可能性
10. まとめ|エネルギーは「主役探し」ではなく「チーム運用」の時代へ
11. よくある質問(FAQ)
—
<a id=”sec1″></a>
1|原子力発電と水力発電・揚水発電の基礎知識
まずは、比較の前提となる基礎知識をざっくり整理します。
1-1 原子力発電の基本と特徴
原子力発電は、ウランなどの核燃料を核分裂させ、その熱で水を沸かし、
蒸気タービンを回して発電する方式です。仕組みだけ見れば「すごく複雑な蒸気機関」です。
主な特徴
燃料1kgあたりから取り出せるエネルギー量が圧倒的に多い
長時間、一定出力を出し続けるのが得意(ベースロード電源)
逆に、こまめな出力調整や停止・起動は苦手
高レベル放射性廃棄物の処分、重大事故時のリスクが大きい
建設や廃炉に時間とコストがかかる
発電所の「出力(kW)」が大きく、「常にドーンと流し続ける」タイプの電源とイメージすると分かりやすいです。
1-2 ダム水力発電の基本と特徴
ダム水力発電は、高いところにある水を落として、水車を回し、その回転で発電します。
主な特徴
燃料が「水」なので、CO₂をほとんど排出しない
タービン・発電機の効率が高く、変換効率は約90%前後とされる
ダムの貯水を調整することで、ある程度出力調整も可能
一度作れば長寿命。数十年〜100年以上使える例もある
反面、大規模ダムは環境影響や地域移転などの課題が大きい
黒四のような巨大ダムは、電源としてだけでなく、治水・利水・観光など多面的な役割も担っています。
1-3 揚水発電の基本と特徴
揚水発電は、ダム水力の「応用編」のような存在です。
1. 電気が余っている時間帯に、下池から上池へ水を「くみ上げる」(ポンプ運転)
2. 電気が足りない時間帯に、上池から水を落として発電する
という**「水をつかった巨大な充電池」**として機能します。
主な特徴
「電気」→「位置エネルギー(高い位置の水)」→「電気」と変換する
行きと帰りの変換で損失が出るため、効率は約70%前後(3割はロス)
しかし、大量の電気を数時間〜十数時間単位で貯めて放出できる
出力の立ち上げが早く、数分〜十数分でフル出力にできる場合もある
「発電所」というより、系統全体のバランスを取るインフラ
揚水発電は、電力市場や電力システムの中では、
「発電量を増やすための設備」というより、**「時間割を編集するための設備」**と理解した方が本質に近いと感じています。
—
<a id=”sec2″></a>
2|高浜原発・美浜原発の発電規模と役割
次に、今回の主役の一つである高浜原子力発電所・美浜原子力発電所の発電規模と役割を整理します。
2-1 高浜原子力発電所:関西電力の原発の柱
高浜原発は、福井県高浜町にある関西電力の主力原子力発電所です。
1号機:82.6万kW
2号機:82.6万kW
3号機:87.0万kW
4号機:87.0万kW
合計:339.2万kW(3,392MW)
仮に、全基がフル出力で24時間動き続けるとすると、
> 3,392MW × 24時間 ≒ 81.4GWh/日
という莫大な電力量を生み出す計算になります。
これは、
一般家庭が1日に使う電力量を約10kWhと仮定すると
約810万世帯分/日に相当する規模です(ざっくりイメージ)。
もちろん、実際には電力需要・定期点検・燃料交換などで稼働状況は変わりますが、
「関西全体のベースロード電源を担う巨大な電源」であることは間違いありません。
2-2 美浜原子力発電所:コンパクトな老舗
美浜原発は、かつて3基体制で合計166.6万kWを持つ原発でしたが、
現在運転しているのは主に3号機(82.6万kW)です。
高浜の1基分の出力と同規模で、
地域にとっては「小さくはない電源」
系統全体で見ると、「中規模のベースロード電源」
といった位置づけと言えるでしょう。
高浜と美浜を合わせると、
> 総出力:約421.8万kW(4,218MW)
この「原発のベースロード」を、
どう補完し、どう置き換えていくのかが、これからのエネルギー政策の大きなテーマになります。
—
<a id=”sec3″></a>
3|奥多々良木・大河内・黒四の発電規模と特徴
次に、水力側の主役たちを見ていきます。
3-1 奥多々良木発電所:日本最大級の揚水発電所
兵庫県朝来市にある奥多々良木発電所は、日本最大級の揚水発電所です。
方式:純揚水式(上池:黒川ダム/下池:多々良木ダム)
有効落差:約385m
最大出力:1,932,000kW(1,932MW)
フル出力で8時間発電したとすると、
> 1,932MW × 8時間 ≒ 15.5GWh
これはどれくらいかというと、
高浜4基が24時間フル稼働したときの1日の発電量(約81.4GWh)の
約5分の1強に相当する電力量を、たった8時間で一気に吐き出せるというイメージです。
つまり奥多々良木は、
> 「高浜原発数基ぶんの出力変動を、一気に吸収・増幅できるエネルギーのダム」
と言い換えることもできます。
3-2 大河内発電所:原発1基クラスの出力を持つ揚水
兵庫県神崎郡神河町にある大河内発電所も、関西電力の揚水発電所です。
最大出力:1,280,000kW(1,280MW)
4台の水車発電機(各32万kW)
この1,280MWという数字は、
美浜3号機(82.6万kW)の約1.5倍
高浜1基(82.6〜87万kW)と比べても「原発1基+α」クラス
と表現できる規模です。
「一つの揚水発電所が、原発1基以上の出力を瞬時に出し入れできる」というのは、
系統運用の観点から見ると、とんでもない存在感です。
3-3 黒四:水力の象徴であり、流域を束ねる司令塔
黒部ダム(黒部川第四ダム)から水を導いて発電する**黒部川第四発電所(黒四)**は、
最大出力:337,000kW(337MW)
数値だけ見ると、
高浜1基(826〜870MW)より小さい
奥多々良木・大河内と比べてもコンパクト
ですが、黒四は単体の数値以上の意味を持っています。
黒部川流域の水力発電所群を束ねる「要」
国土保全(治水)と発電を両立させるダム群の中核
戦後日本の復興と高度成長の象徴的な存在
つまり黒四は、「水のエネルギー」と「山岳地帯の国土利用」の両方を象徴する水力発電所なのです。
—
<a id=”sec4″></a>
4|発電効率から見る「役割分担」―原発vs水力vs揚水
次に、発電効率の観点から、原発・水力・揚水の役割を整理します。
4-1 原子力:燃料効率は高いが、熱効率は3割程度
原子力発電は、燃料1kgあたりから取り出せるエネルギーの総量は圧倒的ですが、
「熱→電気」への変換効率(熱効率)は、一般に30〜35%程度とされています。
残りの約65〜70%は、冷却水や大気として「廃熱」として捨てられる
したがって、設備利用率が高くないと、投資効率が下がる
「止めにくい」「出力調整が苦手」という特徴は、
この熱サイクルの構造と深く関係しています。
4-2 ダム水力:シンプル構造ゆえの高効率
ダム水力の場合は、
「水の位置エネルギー」→「水車・発電機の回転」→「電気」という変換
機械的なロスはあるものの、構造がシンプルなため、
発電効率は90%前後と非常に高いと言われます。
ただし、これはあくまで「ダムに水が溜まっていること」を前提とした話であり、
降水量や融雪に左右される
気候変動の影響も受ける
という意味では、また別の制約もあります。
4-3 揚水:往復70%でも「時間を編集できる価値」が大きい
揚水発電の場合は、
「電気」→「ポンプで水をくみ上げる(位置エネルギー)」
「位置エネルギー」→「水を落として発電(電気)」
という往復変換が入るため、ラウンドトリップ効率は**約70%前後(3割ロス)**とされます。
一見すると、
> 「3割も損するなら、ムダでは?」
と思いたくなりますが、
重要なのは**「電力システム全体で見たときの価値」**です。
電気が余っている時間帯(夜間・強風時・春秋の昼間)に
電気を捨てるくらいなら、水として蓄えておくほうが良い
電気が足りない時間帯(夏冬の夕方・再エネ出力低下時)に
蓄えたエネルギーを放出することで、系統全体の安定性を守る
つまり揚水発電は、
> 「ロスがあるバッテリー」ではなく、
「ロスを前提にしても、全体の損失を減らすためのバッファ」
として機能している、というのが本質です。
—
<a id=”sec5″></a>
5|「原発+揚水」から「再エネ+揚水」へのシフト
ここまでで、
高浜・美浜:大量で安定したベースロード電源
奥多々良木・大河内:その出力を調整する巨大バッテリー
黒四:水力と流域管理の要
という構図が見えてきました。
5-1 昭和〜平成モデル:「原発の夜間余剰を揚水でくみ上げる」
かつての日本の電力システムは、
昼間:需要が多く、原発+火力+水力フル稼働
夜間:需要が少ないが、原発は止めにくい
という状況でした。
そこで、
> 夜間の余剰電力(原発・火力)で揚水のポンプを回し、
昼間のピーク需要に備える
というのが、「原発+揚水」の基本コンビでした。
実際、奥多々良木・大河内が建設された当時の資料を見ると、
「原子力の夜間余剰を有効活用する」という狙いが色濃く出ています。
5-2 令和モデル:「再エネの変動を揚水で平準化する」
しかし、2020年代の日本では状況が変わりつつあります。
太陽光・風力などの変動型再エネが急速に増加
昼間に太陽光が発電しすぎて、出力抑制が発生する地域もある
原発の比率は、ピーク時に比べて大きく低下
この状況で、揚水発電は
> 「原発のための装置」から
「再エネ(太陽光・風力・地熱など)全体を支える蓄電インフラ」
へと、立ち位置を変えつつあると言えます。
具体的には、
春や秋の昼間、太陽光が余る時間帯に揚水でくみ上げ
夏冬の夕方、日が落ちて太陽光が止まる時間帯に放電する
風力の出力が急変したときに、揚水で出力調整をサポートする
といった使い方が想定されます。
—
<a id=”sec6″></a>
6|日本の電源構成の変化とエネルギー政策の方向性
ここで、日本全体の電源構成の変化を簡単に整理しておきます。
6-1 現状:再エネ約2〜3割、原子力は1桁%台
直近のデータでは、
再生可能エネルギー(水力含む):約2〜3割
原子力:1桁〜1割弱
残りは火力(LNG・石炭・石油など)
となっており、かつての「原発30%超」の時代からはかなり様変わりしています。
再エネは水力・太陽光・風力・バイオマスなどが合算
とくに太陽光の比率が伸び、昼間の電力を支える比重が増加
その一方で、出力変動への対応(調整力)の重要性が急上昇
6-2 2030〜2040年:再エネ40〜50%、原子力20%前後を目標に
国のエネルギー政策では、
2030年・2040年を見据え、
電力の40〜50%を再エネで供給
原子力は約20%
残りを火力や水素・アンモニアなどで補う
という方向性が打ち出されています。
ここで重要なのは、
> 「再エネ40〜50%」の中身をどう構成するか
です。
太陽光ばかり増やすと、昼と夜の差が激しくなりすぎる
洋上風力は有力だが、系統整備や漁業との調整が必要
バイオマスは燃料供給やCO₂のカウント方法の議論が続いている
水力は新規大規模開発が難しく、主に既存設備の高度活用になる
そこで、私が注目しているのが**「次世代型地熱発電」**です。
—
<a id=”sec7″></a>
7|次世代型地熱発電とは何か?
――EGS・クローズドループ・超臨界地熱
次世代型地熱発電は、「地熱発電2.0」とも言える存在です。
7-1 日本は「地熱大国」なのに、ほとんど掘れていない
日本は、火山帯に位置することもあり、
資源量:約2,000万kW以上(世界トップクラス)
世界第3位とも言われる潜在能力
を持ちながら、実際の導入量は
稼働中の地熱発電設備:60万kW台
と、ポテンシャルの数%にも満たないのが現状です。
理由としては、
温泉地との利害調整
国立公園内の開発規制
探査・開発コストの高さ
事業化までのリードタイムの長さ
などが挙げられます。
7-2 それでも地熱が持つ「3つの強み」
それでも、地熱発電には他の再エネにはない強みがあります。
1. 出力が安定している(ベースロード電源)
太陽光や風力と違い、24時間365日発電し続けられるポテンシャル
原子力や一部火力に近い「土台の電源」になれる
2. 国産エネルギーである
日本の地下にある「熱」を使うため、輸入リスクが小さい
エネルギー安全保障の観点で非常に重要
3. 再エネでありながら系統安定にも寄与できる
出力をある程度コントロールできれば、調整力も提供できる
「再エネなのに安定している」という特性は、
再エネ比率を高めたい日本にとって貴重です。
7-3 次世代型地熱のキーワード
近年、注目されている「次世代型地熱」は、大きく3つのタイプに分けられます。
(1)EGS(Enhanced Geothermal System)
透水性の低い高温岩体に人工的に亀裂を入れ、水を循環させる方式
既存の高温地熱資源の周りだけでなく、より広いエリアで地熱開発が可能になるポテンシャル
水圧破砕(フラッキング)など、環境・地震への影響の議論も必要
(2)クローズドループ地熱
地下にパイプを敷設し、その中に流体を循環させ、地熱を「間接的」に利用する方式
地下水と流体が直接混ざらないため、温泉との共存がしやすいと期待されている
温泉地の近くでも、環境影響を抑えながら熱だけを利用できる可能性
(3)超臨界地熱
400℃を超えるような深部の超臨界水を利用する方式
非常に高いエネルギー密度を持つが、技術的ハードルも高い
実用化すれば、少数の高出力プラントで大量電力供給が可能になる
これらはまだ研究段階・実証段階のものが多いですが、
ロードマップ上は、2030〜2040年代にかけて実用化の土台づくりが進むとされています。
—
<a id=”sec8″></a>
8|「揚水+次世代地熱+再エネ」が主力になる未来図
ここで、少し未来の日本の電源構成をイメージしてみましょう。
8-1 電源構成を「チーム」として捉え直す
仮に、2040年頃の日本で、
再生可能エネルギー:40〜50%
原子力:20%
火力+水素・アンモニア:30〜40%
という構成を目指すとします。
そのとき、理想的な姿の一つは、
> **「地熱+水力+揚水」でベースと調整の骨格を作り、
その上に「太陽光+風力+蓄電池」**を重ねていく
という構図です。
ここで、
「地熱」は安定した土台
「水力」は流域管理と中長期の調整役
「揚水」は短期〜中期(数時間〜数十時間)を司る巨大バッテリー
「太陽光・風力」はコストの安い主力電源
「蓄電池」は数分〜数時間スケールの微調整
という役割分担になります。
8-2 高浜・美浜と奥多々良木・大河内を例に考える
具体的な数字を再掲すると、
高浜原発4基:3,392MW
美浜3号機:826MW
奥多々良木(揚水):1,932MW
大河内(揚水):1,280MW
黒四(水力):337MW
これらを合わせて、
ベースロード:高浜・美浜・地熱
調整力・蓄電:奥多々良木・大河内・蓄電池
安定電源+流域管理:黒四・その他ダム水力
変動電源:太陽光・風力
という一つの大きな「チーム」として運用するイメージです。
ここで揚水は、
> 「地熱・原発・火力・太陽光・風力など、あらゆる電源からの余剰を受け止め、
系統全体のバランスを取るハブ」
として機能します。
8-3 「原発をどうするか」という問いの置き直し
ここまで来ると、
「原発か、再エネか」という二項対立ではなく、
> 「限られた原発を、どのくらい・いつまで・どの役割で使うのか」
「その間に、どれだけ地熱と再エネ+揚水で土台を作れるか」
という、時間軸と組み合わせの問題であることが見えてきます。
個人的には、
短期〜中期:安全対策を前提とした既設原発の一定利用
中期〜長期:地熱・再エネ・揚水・蓄電池の拡大に合わせて、段階的に原発依存度を下げる
という、**「静かなソフトランディング」**が現実的ではないかと考えています。
—
<a id=”sec9″></a>
9|但馬・北近畿から考える地方の役割と可能性
ここからは、少しローカルな話も交えてみます。
私は、兵庫県北部・但馬の片隅で暮らす中途重度障害者ブロガーです。
日々の生活圏の近くには、
奥多々良木揚水発電所(朝来市)
大河内揚水発電所(神河町)
さまざまな中小水力やダム
温泉地(地熱ポテンシャルの象徴)
が並んでいます。
9-1 「観光地」から「エネルギー拠点」へ
これらの場所は、これまで主に「観光地」として語られてきました。
黒部ダム:観光放水とダムカレーの名所
奥多々良木:ダム湖と紅葉の景勝地
但馬・北近畿:温泉と山のリゾート
しかし、エネルギーの視点で見直すと、
ここには日本の電力システムを支える巨大な貯蔵装置とポテンシャルがある
「観光」と「エネルギー」をセットで語ることができる
という可能性が見えてきます。
9-2 地方が持つ「静かなアセット」
地方は、人口規模やGDPでは大都市に敵いませんが、
エネルギーの観点では、むしろ**「静かな資産」**を多く持っています。
山と谷:揚水発電・中小水力
温泉:地熱発電・熱利用
広い屋根や土地:太陽光
これらをうまく組み合わせれば、
> 「地方が、都市の電力を一方的に供給するだけの存在」から
「地方自身の暮らしと産業を支えつつ、都市と対等に連携するエネルギー拠点」
へと変わっていけるはずです。
9-3 中途重度障害者としての視点:「エネルギーの安定は、生きやすさの条件」
個人的な話を少しすると、
中途で重い障害を負ってから、私は電気のありがたさを以前よりずっと強く感じるようになりました。
エアコンや暖房が止まると、体温調整が難しくなる
通院やリモートワークにも、ネットと電気が不可欠
医療機器が電源に依存しているケースも多い
> 「エネルギーの安定供給が揺らぐこと」は、
障害者や高齢者にとって、直接的な生存リスクにもなり得ます。
だからこそ私は、
原発のリスクを軽視したくない
しかし、「原発を全部止めればそれで解決」という単純な話でもない
というジレンマを、ずっと抱えてきました。
そんな中で、
揚水発電のような静かなバッテリー
次世代地熱のような安定した国産再エネ
小さなダムや中小水力・太陽光のような分散型電源
に、私は**「静かな希望」**を感じています。
—
<a id=”sec10″></a>
10|まとめ|エネルギーは「主役探し」ではなく「チーム運用」の時代へ
最後に、この記事のポイントをあらためて整理します。
10-1 比較から見えたポイント
高浜・美浜原発は、合計で400万kW級のベースロード電源
奥多々良木・大河内の揚水発電所は、原発1〜2基に匹敵する出力を瞬時に出し入れできる巨大バッテリー
黒四は、単体の出力以上に、流域と水力発電群を束ねる司令塔
揚水発電は、発電効率70%前後とロスはあるものの、
「電力システム全体の損失を減らすバッファ」として不可欠
10-2 「原発+揚水」から「再エネ+揚水+次世代地熱」へ
昭和〜平成の日本:
「原発の夜間余剰を揚水が吸収する」モデルが中心
令和以降の日本:
太陽光・風力・地熱などの再エネ拡大に伴い、
揚水は**「再エネ全体を支える蓄電インフラ」**としての役割が増大
日本は地熱資源が豊富で、次世代型地熱(EGS・クローズドループ・超臨界など)が実用化すれば、
「地熱+水力+揚水」を軸にした多層的なクリーン電源システムの実現が見えてくる
10-3 これから私たちができること
では、私たち一人ひとりに何ができるのでしょうか。
「原発か反原発か」という二項対立だけでなく、
電源構成全体のバランスを意識してニュースを読む
地方のダム・揚水発電所・温泉地を「観光」と「エネルギー」の両面で学ぶ
生活の中で、省エネだけでなく、
**「ピーク時に負荷をかけすぎない暮らし方」**を少し意識してみる
(エアコンの使い方、タイマー、電気自動車の充電時間など)
地熱・水力・揚水など、**地元が持つ「静かなアセット」**に目を向け、
それを活かす政策や取り組みを応援する
エネルギーの話は、数字や設備の話に見えがちですが、
結局のところ、それは**「どう生きたいか」「どんな社会にしたいか」**という問いそのものです。
大きなリスクを抱えた原子力で突っ走るのか
化石燃料に依存したまま、じりじりと気候変動リスクを高めるのか
それとも、揚水・地熱・水力・太陽光・風力を組み合わせた
多層的でしなやかなエネルギーシステムを選び直すのか
その選択の一票を、
選挙での投票だけでなく、
日々の暮らしや情報の受け取り方、
そして地域への関わり方の中で
少しずつ重ねていくことが、私たちにできる小さな一歩だと思います。
—
<a id=”sec11″></a>
11|よくある質問(FAQ)
最後に、この記事の内容に関連するよくある疑問に、簡単に答えておきます。
Q1. 揚水発電はエネルギーを「生み出す」発電所なのですか?
A. いいえ、「生み出す」というより「貯めて時間をずらす」装置です。
揚水発電は、
余っている時間帯の電気でポンプを回し、水をくみ上げ
足りない時間帯に水を落として発電する
という仕組みなので、トータルのエネルギー量は減ります(効率約70%)。
その代わり、「余って捨てられるはずだった電気」を有効活用し、
系統全体の安定性を高める役割を果たしています。
Q2. 次世代地熱発電は、いつごろから本格的に使えるようになりますか?
A. 2030〜2040年代にかけて、実証から商用化への道筋が見えてくると考えられています。
EGSやクローズドループ地熱、超臨界地熱などは、
まだ研究・実証段階の技術も多いですが、
国のロードマップや各種プロジェクトの進捗を見ていると、
2030年代に「先行事例」、2040年代に「一定の商用展開」
といったタイムラインが現実味を帯びてきています。
Q3. 原子力発電は今後どうなるのでしょうか?
A. 急激なゼロかフル依存かではなく、「段階的な縮小」と「役割の限定」が現実的だと考えます。
安全性・廃棄物・コスト・社会的受容性などを総合的に考えると、
すでにある原発については、安全対策を徹底したうえで当面は使いながら
地熱・再エネ・揚水・蓄電池などの拡大に合わせて、
依存度を段階的に下げていく
という「静かなソフトランディング」が、
現実的でリスクも相対的に小さいシナリオではないかと、私は考えています。
—
エネルギーの話は難しく見えますが、
一つひとつの設備に「物語」があります。
高浜・美浜、奥多々良木・大河内、黒四。
そして、これから掘り始める地熱と、空と屋根を埋めていく再エネたち。
どれか一つをヒーローにするのではなく、
チームとしてどう運用するかに意識を向けていくことが、
「安定していて、環境にも優しく、地方も息がしやすいエネルギーシステム」
への一番の近道だと信じています。



















コメントを残す