「自分の対応で傷つけたらどうしよう」と不安になっていませんか
初めて障害者雇用の部下を受け入れることになった。
そのとき、多くの管理職は表には出さなくても、強い不安を感じると思います。
何を聞いてよいのか分からない。
どこまで仕事を任せてよいのか分からない。
体調を気遣いすぎると、特別扱いにならないか。
逆に、ほかの部下と同じように接すると、無理をさせてしまわないか。
成果を求めることは、本人を追い詰めることにならないか。
周囲の社員から「なぜあの人だけ配慮されるのか」と不満が出ないか。
何かあったとき、自分の対応が間違っていたと責められないか。
こうした不安を抱くことは、障害への理解がないからではありません。
むしろ、本人を傷つけたくない。
職場で孤立させたくない。
チーム全体も守りたい。
そう真剣に考えているからこそ、迷うのだと思います。
私は31歳で脳出血を発症し、左腕が動かなくなり、左脚にも麻痺が残る中途重度障害者となりました。
その後、障害者雇用を通じて社会へ戻り、配慮を受けながら働いてきました。
当事者として感じるのは、初めて障害者雇用の部下を受け入れる管理職もまた、制度と現場の間で不安を抱える当事者だということです。
経営層は「多様性を進めよう」と言います。
人事部門は「合理的配慮をお願いします」と伝えます。
しかし、実際に毎日の仕事を割り振り、進捗を確認し、成果を評価し、周囲との関係を調整し、体調変化にも向き合うのは現場の管理職です。
理念は会社が掲げる。
けれど、現実の責任は管理職が引き受ける。
ここに、障害者雇用の難しさがあります。
だから最初に伝えたいのです。
最初から完璧である必要はありません。
障害について、すべて知っている必要もありません。
正解を一人で考え続ける必要もありません。
必要なのは、本人へ確認すること。
仕事の目的と期待を伝えること。
うまくいかなければ、働き方を一緒に修正すること。
そして、管理職自身も人事や支援者へ助けを求めることです。
障害者雇用は、管理職が特別に優しい人になれば成功するものではありません。
本人と管理職、そして周囲の社員が、誰も壊れずに働き続けられる仕組みをつくることが大切です。
この記事では、中途重度障害者として働く当事者の視点から、
– 初めて障害者の部下を受け入れる管理職が不安になる理由
– 障害についてどこまで聞いてよいのか
– 障害者雇用における接し方
– 仕事の任せ方と業務設計
– 合理的配慮と特別扱いの違い
– 体調確認や面談で使える質問
– 評価と育成の考え方
– 周囲の社員へどう説明するか
– 管理職が一人で抱え込まないための支援体制
– 配属前から3か月までの受け入れ手順
を、現場で使える形に整理します。
今、不安を感じている管理職の方へ。
その不安は、失格の証拠ではありません。
よりよい受け入れ方を探そうとしている証拠です。
—
初めての受け入れで不安を感じるのは当然である
障害者雇用について学ぶと、管理職には多くのことが求められます。
本人の障害特性を理解する。
合理的配慮を提供する。
差別的な扱いをしない。
適切な仕事を用意する。
体調変化へ対応する。
周囲の社員へ説明する。
成果を評価する。
成長を支援する。
これらを一度に示されれば、不安になるのは当然です。
しかも、障害は一人ひとり異なります。
同じ身体障害でも、難しい動作や疲れ方は違います。
同じ病名でも、症状、体調変化、得意な仕事、必要な配慮は異なります。
研修で一般論を学んでも、目の前の本人へそのまま当てはめられるとは限りません。
そのため管理職は、
「間違ったことを言ってはいけない」
「無理をさせてはいけない」
「しかし仕事は任せなければならない」
という板挟みになります。
ここで最初に知っておいてほしいことがあります。
管理職の役割は、障害の専門家になることではありません。
管理職の役割は、本人が力を発揮できる仕事の条件を一緒に整理することです。
病気を治すことでも、私生活を管理することでもありません。
仕事上の期待、困難、支援方法を明確にし、必要に応じて人事や支援機関へつなぐ。
それで十分です。
—
障害者を「壊れやすい人」と決めつけないでほしい
初めて障害者を部下に持つと、管理職は慎重になります。
重い仕事を任せないほうがよいのではないか。
期限のある仕事は避けたほうがよいのではないか。
失敗を指摘すると傷つくのではないか。
本人へ強く言わないほうがよいのではないか。
その気遣いは理解できます。
しかし、気遣いが過剰になると、本人は仕事から外されます。
簡単な補助業務しか任されない。
責任のある仕事を与えられない。
会議へ呼ばれない。
研修や昇進の対象にならない。
失敗しても何も言われない。
一見すると優しい対応です。
けれど、当事者から見ると、
「期待されていない」
「成長しなくてもよいと思われている」
「法定雇用率を満たすために置かれている」
というメッセージに感じることがあります。
障害があることと、能力がないことは同じではありません。
できない方法があることと、成果を出せないことも同じではありません。
必要なのは、仕事を与えないことではなく、成果へ至る方法を調整することです。
—
初対面で障害についてどこまで聞いてよいのか
管理職が最も迷いやすいのが、障害についての質問です。
聞かなければ配慮できない。
しかし、聞きすぎるとプライバシーへ踏み込む。
この境界は、病名ではなく質問の目的で考えると整理しやすくなります。
聞いてよいのは、仕事に必要な情報
たとえば、次のような質問です。
「仕事をするうえで難しい動作はありますか」
「疲れが強くなりやすい時間帯はありますか」
「指示は口頭と文章のどちらが分かりやすいですか」
「体調が悪くなる前に現れやすい変化はありますか」
「困ったとき、どのように声をかけてもらうと相談しやすいですか」
「通院や休憩について、事前に共有しておきたいことはありますか」
「仕事を進めるうえで、避けたほうがよい方法はありますか」
これらは病歴を知るためではなく、仕事の条件を確認するための質問です。
原則として踏み込みすぎないほうがよいこと
仕事に直接関係のない発症原因。
家庭内の詳しい事情。
治療の詳細。
過去のつらい経験。
障害年金の受給額。
障害者手帳の細かな内容。
本人が話したくないと示している医療情報。
本人から話す場合もあります。
そのときも、興味本位で深掘りするのではなく、仕事上どのような対応が必要かへ戻すことが大切です。
使いやすい前置き
「答えにくいことは答えなくて大丈夫です」
「仕事を調整するために必要な範囲で教えてください」
「状況が変われば、後から修正できます」
この一言があるだけで、本人は話しやすくなります。
—
本人が「大丈夫です」と答えても、本当に大丈夫とは限らない
障害者雇用で働く人の中には、困っていても「大丈夫です」と答える人がいます。
配慮を求めることで、
仕事を減らされるのではないか。
能力がないと判断されるのではないか。
契約を更新してもらえないのではないか。
周囲から面倒な人と思われるのではないか。
と不安になるからです。
私自身も、働けることへの感謝や、迷惑をかけたくない思いから、無理をしてしまう気持ちは理解できます。
だから管理職は、「大丈夫ですか」と聞くだけでは十分ではありません。
「大丈夫ですか」は、相手が「大丈夫です」と答えやすい質問だからです。
代わりに、具体的な事実を聞いてください。
「今週の疲労を10段階で表すと、どのくらいですか」
「今の業務量を来週も続けられそうですか」
「通勤、勤務、帰宅後の生活のうち、最も負担が大きいのはどこですか」
「今の仕事で、一つだけ変えられるなら何を変えたいですか」
「このまま1か月続けた場合、体調に影響が出そうですか」
こうした質問であれば、本人も状況を整理して答えやすくなります。
—
見えている勤務時間だけで負担を判断しない
管理職から見えるのは、主に職場での時間です。
しかし、中途重度障害者にとって、働くことは勤務開始から終了までだけではありません。
朝起きる。
身体を動かせる状態に整える。
服を着る。
移動する。
職場へ到着する。
勤務を終える。
帰宅する。
食事や入浴をする。
翌日に備えて身体を回復させる。
これらすべてを含めて、働く一日です。
障害のない人には短い動作でも、片手しか使えない人や歩行に障害がある人には時間と体力が必要です。
職場では問題なく見えていても、帰宅後に何もできなくなっている場合があります。
その状態が続くと、ある日突然、欠勤や長期休職として表面化します。
管理職が家庭生活を管理する必要はありません。
ただし、職場で働けていることだけを見て「問題なし」と判断しない視点は必要です。
—
合理的配慮は「仕事を免除すること」ではない
合理的配慮という言葉を聞くと、管理職は業務を減らすことだと考えがちです。
しかし、本来の目的は、障害によって生じる仕事上の障壁を調整し、本人が能力を発揮できるようにすることです。
たとえば、
手書きが難しい人へパソコン入力を認める。
長時間の立ち作業が難しい人へ椅子を用意する。
口頭指示を覚えにくい人へ文章でも伝える。
疲労が蓄積しやすい人へ短い休憩を分散して設ける。
通勤混雑の負担が大きい人へ時差出勤を認める。
複数業務の同時進行が難しい人へ優先順位を明確にする。
これらは、成果を求めない対応ではありません。
成果を出すための経路を変える対応です。
公平と平等は同じではない
全員に同じ方法を求めるのが平等です。
必要な条件を整え、同じ目的へ参加できるようにするのが公平です。
配慮は優遇ではなく、仕事へ参加するための条件調整です。
—
配慮は一度決めて終わりではない
入社時や配属時に決めた配慮が、半年後も適切とは限りません。
仕事が変わる。
本人が業務に慣れる。
体調が変化する。
新しい困難が見つかる。
最初は必要だった支援が不要になる。
反対に、見えていなかった負担が表面化する。
だから合理的配慮は、固定された特別ルールではなく、定期的に見直す仮説として扱うほうが現実的です。
「この配慮で本当に働きやすくなったか」
「成果へつながっているか」
「本人や周囲へ新たな負担が生じていないか」
「別の方法のほうがよくないか」
を確認し、調整してください。
配慮を変更することは失敗ではありません。
働き方を改善しているということです。
—
障害者雇用でも、仕事の目的を明確にする
障害者へ仕事を任せるとき、優しさから曖昧な指示になる場合があります。
「できる範囲でお願いします」
「無理しない程度にやってください」
「急がなくて大丈夫です」
こうした言葉は安心を与える一方で、本人を困らせることがあります。
どこまでやれば完了なのか。
いつまでに必要なのか。
何を優先するのか。
どの品質を求められているのか。
分からないからです。
障害者雇用でも、仕事の基本は同じです。
– 何のための仕事か
– 完了条件は何か
– 期限はいつか
– 優先順位は何か
– 困ったとき誰へ相談するか
– 中間確認はいつ行うか
を明確にしてください。
配慮が必要なのは、期待をなくすことではありません。
期待を理解できる形で伝えることです。
—
任せる仕事は「できる作業」だけでなく「役割」から考える
受け入れ初期には、本人が確実にできる単純作業から始めることも必要です。
しかし、それだけで終わらせてはいけません。
単純作業を繰り返すだけでは、本人は自分が何のために働いているか分からなくなります。
仕事には作業と役割があります。
作業とは、データを入力する、書類を確認する、備品を整理するなどの行為です。
役割とは、その仕事によって誰を支え、何を改善し、組織へどのような価値を提供するかです。
たとえば、
「書類をスキャンする」
だけではなく、
「必要な情報を誰もがすぐ確認できる状態へ整える」
と伝える。
「データを修正する」
だけではなく、
「誤った情報による判断ミスを防ぐ」
と伝える。
役割が見えると、本人は仕事の意味を理解できます。
人は、忙しいだけでは働き続けられません。
自分が必要とされている感覚が必要です。
—
「できないこと」ではなく「安定してできる条件」を確認する
障害者を受け入れるとき、できないことを確認するだけでは不十分です。
より重要なのは、どのような条件なら安定してできるかです。
片手では紙の資料を扱いにくいが、電子データなら処理できる。
口頭指示だけでは抜けるが、文章があれば正確に進められる。
長時間集中は難しいが、休憩を挟めば品質を維持できる。
突発業務は苦手だが、予定が分かれば対応できる。
複数の依頼を同時に受けると混乱するが、窓口を一人にすれば安定する。
この「条件」を見つけることが、管理職の役割です。
障害名から仕事を決めるのではなく、本人が安定して成果を出せる条件から設計してください。
—
評価しないことは、優しさではない
管理職の中には、障害者へ厳しい評価をすると差別になるのではないかと心配する人がいます。
しかし、評価を曖昧にすることも本人を苦しめます。
何ができているのか分からない。
何を改善すべきか教えてもらえない。
昇給や役割拡大の条件が見えない。
周囲からは、配慮されているだけに見える。
その状態では、本人は成長できません。
評価で分けるべき二つ
成果を評価すること。
成果へ至る方法を調整すること。
この二つを分けてください。
たとえば、一定件数のデータを正確に処理するという成果は共通にする。
一方で、入力方法、休憩の取り方、指示の伝え方は調整する。
方法が違っても、成果を公平に評価できます。
改善点は具体的に伝える
「もっと頑張ってください」
「周囲を見て動いてください」
では伝わりません。
「提出前に、この3項目を確認してください」
「依頼を受けたら、期限と優先順位を復唱してください」
「判断に迷った場合は、30分以上抱えず相談してください」
というように、行動へ落とし込んで伝えることが大切です。
—
失敗をすべて障害のせいにしない
障害者がミスをすると、
やはり障害があるから難しいのではないか。
この仕事は任せられないのではないか。
と考えられることがあります。
しかし、そのミスは本当に障害だけが原因でしょうか。
指示が曖昧だった。
教育時間が不足していた。
業務手順が属人化していた。
誰でも間違えやすい工程だった。
確認者が決まっていなかった。
仕事量が急に増えた。
こうした組織側の問題が隠れていることもあります。
障害者のミスを分析することは、業務設計の弱点を見つける機会です。
「本人に何ができないか」だけでなく、
「この仕事は誰にとっても分かりやすく設計されているか」
と問い直してください。
—
本人だけでなく、周囲の社員にも説明が必要である
障害者本人への配慮だけを進めると、周囲の社員に疑問や不満が生じる場合があります。
なぜあの人だけ時差出勤なのか。
なぜ業務量が違うのか。
なぜ頻繁に休憩できるのか。
自分たちへ負担が増えているのではないか。
こうした感情を「理解がない」と否定すると、職場の分断が深まります。
一方、本人の障害や病歴を勝手に説明することもできません。
必要なのは、個人情報を守りながら、職場の運用を説明することです。
「本人と会社で確認した働き方です」
「仕事の成果を出すために必要な調整です」
「必要に応じて誰にでも働き方を調整する方針です」
「業務負担に偏りがあれば、管理職が見直します」
と伝えます。
配慮の詳細を公開する必要はありません。
しかし、管理職がチーム全体の公平性を見ていることは示す必要があります。
—
周囲へ負担が集中していないかを確認する
合理的配慮は、本人だけが働きやすくなれば成功というものではありません。
本人が免除された業務が、いつも同じ社員へ集中する。
急な欠勤対応を特定の人だけが担う。
本人への説明役を一人の同僚へ任せ続ける。
このような状態は長続きしません。
配慮に伴う業務調整は、管理職の責任で設計する必要があります。
業務を廃止できないか。
手順を簡素化できないか。
複数人で分担できないか。
本人が代わりに担当できる業務はないか。
チーム全体の仕事量を見直せないか。
個人の善意へ依存せず、仕組みで調整してください。
—
体調不良への対応ルールを平常時に決めておく
体調が悪化してから対応を考えると、本人も管理職も混乱します。
平常時に、次の内容を確認しておくと安心です。
– 体調悪化の前兆
– 本人が自分で行う対応
– 管理職へ報告する基準
– 休憩や早退を判断する目安
– 緊急時の連絡先
– 医療機関への連絡が必要な場合
– 本人が意思表示できないときの対応
– 復帰時に確認する項目
重要なのは、管理職が医学的判断をすることではありません。
「何が起きたら、誰へつなぐか」を決めておくことです。
—
休ませることと、仕事から外すことは違う
体調を崩した本人へ休養を勧めることは必要です。
しかし、一度休んだことを理由に、重要な仕事から永久に外してはいけません。
体調不良は、能力の喪失ではありません。
一時的に仕事量を減らす。
復帰後は小さな業務から再開する。
一定期間後に元の役割へ戻す。
定期的に本人と確認する。
こうした戻る道を残してください。
配慮によって一度仕事から外れたあと、二度と戻れない。
当事者にとって、それは休養ではなく、キャリアの終了になります。
—
管理職がやってはいけない7つの対応
1.本人に確認せず仕事を減らす
善意でも、本人の成長機会を奪う可能性があります。
2.何でも「障害だから仕方がない」と処理する
改善できる問題まで放置されます。
3.配慮の内容を同僚へ勝手に話す
本人のプライバシーと信頼を損ないます。
4.本人の相談相手を管理職一人に限定する
相談できない状況が生まれ、管理職も疲弊します。
5.体調確認を監視にする
細かな行動や私生活まで管理すると、本人は本音を言えなくなります。
6.失敗を指摘せず放置する
本人は評価基準を理解できず、成長機会を失います。
7.障害者雇用を管理職個人の善意で運営する
異動や退職で支援が消え、再現性がなくなります。
—
面談で使える質問例
受け入れ直後
「仕事をするうえで、最初に共有しておきたいことはありますか」
「指示や説明は、どの方法が最も理解しやすいですか」
「困ったとき、どの段階で相談できると安心ですか」
「避けたほうがよい作業や環境はありますか」
1週間後
「実際に働いてみて、想定と違ったことはありますか」
「身体面と心理面で、負担が大きかった場面はありますか」
「説明が不足していた仕事はありましたか」
「今の業務量を来週も続けられそうですか」
1か月後
「現在の配慮で役立っているものは何ですか」
「反対に、あまり役立っていないものはありますか」
「もっと任せてほしい仕事はありますか」
「仕事の中で、自分が役立っていると感じる場面はありますか」
定期面談
「最近、無理をして合わせていることはありませんか」
「仕事を続けるために、今見直したいことはありますか」
「成長したい業務や身につけたい能力はありますか」
「私の関わり方で、変えてほしいことはありますか」
—
管理職一人で抱え込まないための支援体制
障害者雇用がうまくいかない原因を、本人と直属上司だけの関係へ閉じ込めてはいけません。
必要に応じて、
– 人事・労務担当者
– 産業医
– 保健師
– 障害者職業生活相談員
– ジョブコーチ
– 就労支援機関
– 医療機関
– 本人が希望する家族
と役割を分担します。
家族や支援機関との情報共有は、原則として本人の同意を確認してください。
管理職は本人の治療者でも、生活支援者でもありません。
仕事の管理と職場調整に集中し、それ以外は適切な専門職へつなぐ。
この境界を持つことが、本人と管理職の双方を守ります。
—
受け入れ初日から3か月までの実践ロードマップ
配属前|仕事と支援体制を準備する
本人へ任せる予定の業務を整理する。
業務の目的、期限、難易度、必要な能力を確認する。
指示を出す人を明確にする。
相談窓口を複数用意する。
配慮内容を本人、人事、管理職で確認する。
緊急時の対応を決める。
周囲へ説明する範囲を本人と相談する。
初日|安心よりも見通しをつくる
歓迎の言葉を伝える。
職場の基本ルールを説明する。
その日の予定を示す。
相談相手を紹介する。
仕事の目的と期待を伝える。
最初から障害について長時間聞き取らず、必要事項を段階的に確認する。
最初の1週間|小さく始め、頻繁に確認する
仕事を細かく区切る。
完了条件を明確にする。
短時間の確認を毎日行う。
できたことを具体的に伝える。
困難が出たら、本人の能力ではなく条件を調整する。
2週間から1か月|業務量と配慮を見直す
疲労の蓄積を確認する。
単純作業だけに偏っていないかを見る。
得意な仕事を探す。
周囲の負担を確認する。
本人の希望を聞きながら、少しずつ役割を広げる。
2か月から3か月|定着から成長へ移る
評価基準を共有する。
本人の強みと課題を言語化する。
研修や育成の機会を検討する。
配慮を継続・変更・終了する項目を整理する。
中長期的な役割を一緒に考える。
—
受け入れがうまくいっているかを測るチェック項目
採用後に出勤しているだけで、定着が成功したとは言えません。
次の点を確認してください。
– 本人に明確な仕事がある
– 仕事の目的を本人が説明できる
– 困ったときの相談先が分かっている
– 合理的配慮が実際に使われている
– 本人が無理を隠さず話せる
– 定期的な面談が行われている
– 成果と改善点が具体的に伝えられている
– 周囲の社員へ負担が偏っていない
– 本人に成長機会がある
– 体調悪化後に戻れる仕組みがある
– 管理職以外にも支援者がいる
– 配慮が定期的に見直されている
特に重要なのは、本人に仕事と期待があることです。
「何もしなくても在籍できる職場」ではなく、
「必要な調整を受けながら役割を果たせる職場」
を目指してください。
—
障害者雇用は、管理職のマネジメントを可視化する
障害者雇用は、特殊な人を管理する特別な仕事だと思われがちです。
しかし実際には、障害者雇用で必要とされることの多くは、すべての部下に有効です。
指示を明確にする。
仕事の目的を伝える。
優先順位を整理する。
定期的に対話する。
個人の強みを生かす。
負担を早期に発見する。
成果を具体的に評価する。
相談しやすい関係をつくる。
曖昧な業務を見直す。
障害者の受け入れによって問題が生まれたのではなく、以前からあった職場の曖昧さが見えることがあります。
障害者雇用は、管理職を試す罰ではありません。
組織のマネジメントを改善する機会です。
—
多様性を現場へ押しつけないために
企業は多様性を掲げます。
障害者雇用率の達成を目指します。
採用人数や定着率を経営指標として示します。
しかし、受け入れのための時間、人員、教育、相談体制を管理職へ与えなければ、多様性は現場への追加業務になります。
管理職が不安や困難を訴えたとき、
「理解が足りない」
「管理職なのだから対応してください」
と片づけてはいけません。
それでは管理職が疲弊し、その緊張が本人へ向かいます。
企業には、受け入れ管理職を支援する責任があります。
– 配属前の研修
– 業務設計の支援
– 定期的な人事面談
– 専門家へ相談できる窓口
– 緊急時の判断基準
– 周囲の業務負担への対応
– 管理職交代時の引き継ぎ
– 成功事例と失敗事例の共有
を整える必要があります。
多様性とは、異なる人を現場へ送り込むことではありません。
受け入れる現場も支えることです。
多様性の理念だけが先行すると、管理職と当事者の双方が孤立します。
この問題については、次の記事で詳しく考察しています。
▶ “日本は多様性を推進するべきか|中途重度障害者が「今は急ぐべきではない」と考える理由”
障害者雇用の基本的な制度、合理的配慮、定着支援については、こちらも参考にしてください。
▶ “障害者雇用とは何か|採用・合理的配慮・職場定着・家族連携を当事者が解説”
▶ “2026年7月に障害者法定雇用率2.7%へ|企業が始める採用・定着・受け入れ準備” (https://newlifestylesdlm.jp/2026/06/25/disability-employment-rate-2-7-company-preparation-reporting-2026/)
—
初めて障害者を受け入れる管理職へ、当事者から伝えたいこと
あなたが不安を感じていることを、責めたいとは思いません。
何を聞いてよいか分からない。
どこまで任せてよいか分からない。
本人も周囲も守りたいが、正解が分からない。
その迷いは、真剣に向き合おうとしている証拠でもあります。
ただ、一人で正解をつくろうとしないでください。
障害者本人も、自分に必要な配慮を最初から完全に説明できるとは限りません。
実際に働いて初めて分かることがあります。
管理職も、本人も、最初は分からなくて当然です。
大切なのは、
分からないことを聞けること。
うまくいかなければ変えられること。
本人を守るために仕事を奪わないこと。
配慮しながらも期待を伝えること。
管理職自身も助けを求めること。
です。
障害者雇用に必要なのは、完璧な理解ではありません。
「自分には見えていない困難があるかもしれない」と考え、本人と対話し続ける姿勢です。
—
結論|よい管理職とは、すべてを知っている人ではない
初めて障害者雇用の部下を受け入れるとき、完璧な対応を目指さなくてよいのです。
障害について知らないことがあってもよい。
対応を間違えることがあってもよい。
一度決めた配慮を変更してもよい。
必要なのは、間違いを認め、本人と一緒に修正できることです。
よい管理職とは、障害についてすべてを知っている人ではありません。
本人の言葉を聞き、仕事の期待を伝え、必要な条件を調整し、一人で抱え込まずに支援を求められる人です。
障害者本人も、管理職に特別な聖人であることを求めているわけではありません。
一人の働く人として見てほしい。
できないことだけでなく、できることを見てほしい。
配慮だけでなく、役割と期待を与えてほしい。
困ったときに話し合い、もう一度調整してほしい。
それが、多くの当事者が望んでいることだと思います。
多様性は、違う人を採用した瞬間に完成するものではありません。
違う人同士が、分からなさを抱えながらも仕事を続けられる関係をつくることです。
あなたの職場では、障害のある部下へ「配慮」だけでなく、「役割」と「期待」を渡せているでしょうか。
—
この記事を、今一人で悩んでいる管理職へ届けてください
初めて障害者の部下を受け入れる管理職は、不安を周囲へ言いにくいものです。
理解がないと思われたくない。
管理能力を疑われたくない。
本人を傷つけたくない。
同僚へ負担をかけたくない。
その結果、誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまうことがあります。
この記事を読んで、
「自分だけが不安なのではなかった」
「何を確認すればよいか分かった」
「本人へ仕事を任せることも配慮なのだと気づいた」
そう感じた方は、ぜひ保存してください。
そして、初めて障害者雇用を担当する管理職、人事担当者、経営者、現場の同僚へ共有してください。
一度のシェアが、管理職の孤立を防ぎ、その先にいる障害者本人の働きやすさにつながるかもしれません。
障害者本人だけに理解を求めるのでもなく、管理職だけに責任を背負わせるのでもない。
本人、管理職、人事、同僚、支援者が、それぞれの役割を持てる職場をつくることが必要です。
—
New Lifestyle DLMをフォローする
New Lifestyle DLMでは、中途重度障害者として働く当事者の視点から、
– 障害者雇用
– 合理的配慮
– 管理職の受け入れ支援
– 職場定着
– 家族連携
– 多様性と包摂
– 社会復帰
– 人生再設計
– 自分を大切にする生き方
について発信しています。
制度の説明だけではなく、現場で本人と管理職が何に悩み、どこですれ違い、どうすれば誰も壊れずに働き続けられるのかを考え続けています。
きれいな成功事例だけではありません。
配慮が過剰になり、仕事を奪ってしまうこと。
本人が「大丈夫です」と言いながら無理を重ねること。
管理職が相談できずに疲弊すること。
周囲の社員へ負担が偏ること。
そうした言いにくい現実も、当事者の言葉で伝えていきます。
今後も、障害者雇用を「採用人数」や「雇用率」だけで終わらせず、人が働き続けられる組織設計として深掘りしていきます。
この記事が心に残った方は、New Lifestyle DLMをフォローしてください。
そして最後に、あなたの職場へ問いかけてみてください。
障害者を受け入れる準備だけでなく、初めて受け入れる管理職を支える準備もできているでしょうか。




















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