「前向きなネガティブ思考」と「真面目でぶっ飛んでいる」──中途重度障害者として働く私の“仕事の哲学”

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はじめに|障害者として「働くこと」は“当たり前”じゃない

私が中途で重度の身体障害を負ってから、すでに10年以上の月日が流れました。右脳の出血により左半身が麻痺し、「もう働けないかもしれない」と言われたその日から、私は生きることの意味と、働くことの価値を問い続けてきました。

復職し、再び社会の一員として仕事をする中で、何より大切にしている2つの信念があります。それが「前向きなネガティブ思考」と「真面目でぶっ飛んでいること」です。矛盾して聞こえるかもしれません。でも、この2つこそが、私の働く力の源であり、障害者である私が“健常者社会”の中で違和感なく居場所を作るための知恵でもあるのです。

この記事では、その2つの信念を軸に、私自身の実体験と考察を交えながら、「働くこと」の本質に迫ってみたいと思います。


1. 「前向きなネガティブ思考」とは何か?

1-1|「ネガティブ=悪」ではない

一般的に、ネガティブな思考は“悪いもの”“改善すべき性格”とされがちです。ですが、私は違うと考えます。ネガティブな思考こそが、自分や他者の危機を察知し、先回りして対策を立てる「予防的思考力」なのです。

私はリスクを想定することにかけては、職場でもかなり敏感なほうです。たとえば、会議資料の提出期限、メールの言い回し一つ、お客様への伝え方など、些細な“ほつれ”が将来の大きなトラブルになる可能性を感じると、自然と事前に手を打ちます。

これは、障害を負ってから身についた「生存本能」でもあると思います。体が思うように動かないぶん、先回りの思考が必要になる。だからこそ、ネガティブであることは生き残るための重要な戦略だったのです。

1-2|「前向きさ」との両立

しかし、ネガティブなだけでは潰れてしまいます。そこで私は「前向きなネガティブ思考」という独自の思考法に辿りつきました。

前向きなネガティブ思考とは、「最悪の事態を想定しつつ、それでもなお行動を止めない姿勢」です。

たとえば、転職活動。障害者雇用の門は狭く、書類で落とされることも日常茶飯事。でも、私は落ちたらどうするか、今の職場で続けられなくなったらどうするかを、事前に想定しつつも、「それでも挑戦しよう」と前向きに一歩を踏み出してきました。

前向きなネガティブ思考は、「ダメかもしれない」と思いながらも「でも、やってみよう」と言える思考スタイルです。現実から目をそらさず、希望を抱く。それは、障害者が生きていく上で最も実践的で、持続可能なマインドセットだと私は信じています。


2. 「真面目でぶっ飛んでいる」という矛盾のなかにある本質

2-1|真面目さの正体は「責任感」

私は、どちらかというととても真面目な人間です。時間を守る。言われたことは丁寧にこなす。任されたタスクは完璧にやりたい。こうした“真面目さ”は、会社勤めをする上で私の強みでもあります。

しかし、真面目であるがゆえに、気を抜くことができず、自分を追い込んでしまう時期もありました。

そんな私が「真面目でぶっ飛んでいる」という言葉に出会ったのは、ある同僚からの一言でした。「岡さんって、基本真面目だけど、ときどきぶっ飛んだこと言うよね。でも、それがいいよね」と。

その時、私は初めて、「真面目であること」と「ぶっ飛んでいること」は矛盾しないのだと気づいたのです。

2-2|ぶっ飛ぶことで世界が広がる

私の“ぶっ飛び”とは、たとえばこんなことです。

  • 会議で突然、「この書類、紙じゃなくて“演劇”でプレゼンしませんか?」と提案してみる。
  • 職場の朝礼で、「今日のラッキー障害グッズは“杖”です!」と笑いを取りに行く。
  • 真面目な場面で「でも本当にやるべきことって“楽しむ”ことじゃないですか?」と問いを投げる。

真面目さに裏打ちされた“ぶっ飛び”は、単なる奇をてらった行動ではなく、「本質に迫るための逸脱」なのです。職場で凝り固まった思考をゆさぶり、人間味を取り戻す手段とも言えます。


3. 中途重度障害者という立場だからこそ、この2つが生きる

3-1|“正解がない”からこそ必要な柔軟性

障害者としての働き方には「正解」がありません。誰かのロールモデルがあるわけではないし、制度も完璧ではない。そのなかで自分らしく働くには、「ネガティブ思考の備え」と「ぶっ飛んだ柔軟性」が必要になります。

たとえば、手すりがない場所に行くとき、ネガティブ思考は「転ぶかもしれない」と想像して杖を用意します。一方、ぶっ飛んだ思考は「じゃあこのフロアを“杖レビュー”して、次の会議資料にしよう!」という新しい価値を見出す。

この2つが揃うと、ただの困難も、社会貢献につながる仕事になるのです。

3-2|「普通」でいることを目指さない強さ

私はもう、「健常者と同じように」働くことを目指していません。代わりに、障害を持っている自分だからこそできる価値の出し方を探しています。

「前向きなネガティブ思考」は、生き延びる知恵。「真面目でぶっ飛んでいる」は、社会に溶け込みつつも“個”を発揮する表現。

この二本柱は、私が障害者として、そして一人のプロフェッショナルとして働き続けるための武器であり、誇りなのです。


おわりに|「自分らしさ」は矛盾のなかにある

私たちは、つい「一貫性」や「整合性」を求めがちです。しかし、人生とは本来、矛盾に満ちたものです。

ネガティブなのに前向き。真面目なのにぶっ飛んでいる。私の働き方は、そんな“矛盾の共存”のなかにあります。でも、そのどれもが本物の私であり、そのまま職場で活きている。

だからこそ私は、これからも「前向きなネガティブ思考」と「真面目でぶっ飛んでいる」姿勢を大切にしながら、“働く”という行為を通して、世界との接点を築き続けたいと思っています。

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About Me

I’m Jane, the creator and author behind this blog. I’m a minimalist and simple living enthusiast who has dedicated her life to living with less and finding joy in the simple things.

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